20年(以上)振りの動物園。

ちっち小屋から動かないちびちゃん。
心の中で語りかけていたのかもしれません。
真剣なその瞳がきらきらしていて、ゆっくり観るといいよって思ってしまいます。
遊びに来てる時はなるべく納得しながら動いて欲しいので、急かしたりしたくないの。
気持ちは解るけど、待っててね、おとさん。

ついには(やっぱり)中に入りたいと言い出しちゃった。
…入られないんだよ…ごめんね。

大きなドーム状の小屋、何周しただろう。
漸く納得したらしいちびちゃんはてけてけ歩き出しました。
おとさんとかくれんぼしながら歩く、走る。
すぐ「抱っこ!」のちびちゃんが眠いはずなのにこんなに!
それだけで来た甲斐があったと思います。

もう、ほんっとうに<目的>がないと歩くのをいやがる。
(ばあばに言わせるとこんなところまでじいじに似ているらしい)
あと”ハイジちゃんモード”や”シータ(天空の城ラピュタのヒロイン)モード”に入った時。
そしてデパートなんかでおとさんとかくれんぼうし出した時。

そんな、ちびちゃんなりの<目的>
それを与えるのにいつも苦労しています。
ただね、すっごいマイペース頑固ちゃんなので、”与えられるのが嫌い”らしくて、下手に提供すると拒まれるし…。
ふう。

そんな、あなたが大好きよ。

ぞうさんに辿り着いてわくわくのおとさん。
「ぞうさんだよー。」

ちびちゃんは固まっていました。
一定の距離を保って近寄りません。
ぞうさんがのそっと小屋に頭を入れて、背中(おしり?)をむけたら、手すりまであと1mのところまで近寄りましたが、そこでまた固まり…。

何だか可愛可哀想になって、お隣のライオンさんに行きました。

「ライオンさんだよー。」
「…ライオン。」
こちらは、お気に入りだった模様。
大好きな猫ちゃん科だし、お顔は可愛いしね。

親としては怖いライオン。
ちびちゃんは手すりによじ登りそうな勢い。
手すりは小ちゃい子がそう出来ないように大きく半円形に沿っているけれど…下を覗くと深い谷みたいになっているけれど…あれ、ライオンさんがいる場所と繋がってるよね。
お堀みたいにはなってないよねえ。

これ、落ちたら…考えてぞっとした。

「ライオン、ばいたーい。」
ご機嫌になったちびちゃんは、また作動しだしました。
小さな小屋に”テリトリーに拘る”タイプの大きめなちっちたちが待っているのもあり、小走りに歩きます。

入場券売り場前のオウムも(書き忘れましたけれど、ここから動くまでがまた…ね。動物園に入園しないまま帰ることになるんじゃないかと思ったよ)。
一番大きいドーム型小屋も。
そしてこの小さな小屋も。
やっぱりちっちなんだね。あなたの心を捕らえるのは。

でも、禿げ鷹はあまりにも大きくて、彼女にちっちと呼ばれませんでした(笑)。

動物園に着いたとき、懐かしい<ミルクコーヒー味パピコ>を食べているおじさんを見かけたので、私はすっかりパピコモードに入っていました。
きっと当時からあったであろう展望台横の売店でアイスボックスを覗いた私は落胆。
でも、カルピスの凍った同じタイプのがあったので、ちびちゃんにそれを買ってあげました。
食べ方が解らないらしく、にゅにゅにゅっと出してもらった部分だけを食べてはおとさんやおかさんに渡す…を繰り返しながらも飽きずに食べました。

それから登って降りるだけが目的だったらしい展望台の階段を上り下りして(景色も愛でましょう。九十九島が夕日に照らされて綺麗だったよ。)、高所恐怖症の気がある私はジェンヌさんって凄いなあとまたモードが入りそうになりながら、へっぴり腰で地上に降り立ちました(おーげさ)。

ちっちゃなお子さま遊園地というか…コインで動く遊具が揃った場所。
…あちゃ。
ジャスコに行っても一度アンパンマンに乗せたら降りたがらなくて大変だったので乗せないようにしていたんですけれど、意外なことにおとOK.が出たので大人しそうなのにおとさんと乗ることに。
楽しそうだなあー。
でも、隣の派手ーな音を立てて動き出した2両構成の汽車に釘付けのちびちゃん。
降りるなり
「でぇーしゃ(電車)!」
停まるのを待ってる。
…ううむ。ここは仕方あるまい。電車、大好きだもんねえ。
親も見落とすタイミングでも、ちっちが飛んでるのとわんわんが歩いてるのと電車が走っているのは見逃さないからね。
今度はおかさんがつきあいました。
相当楽しかったらしく、もう一回乗ると聞きません。
あんまり言うので妥協しようとしたらおとさんがぴきっと音を立てたので説得しました。
4回話したら「でーしゃ、ばいばーい。」
…おりこうさんだ(涙)。

その後しばらーーーーーく砂利で遊び。
さあ、帰ろうとしたとき。

幼い頃の記憶がぱぱっと蘇りました。

「この先にテナガザルがいるはず。」

閉園45分前。
もう、殆どの動物たちは健康管理上の理由で厩舎に入っていました。

「このテナガザルは33歳です。人間で言うと8?歳に当たります。

ええっ!?
あの弟Dちゃんがスケッチ大会で入選した、あのテナガザル。
生きていたの!!?

これには本当に感動しました。
このお猿さんは、ずーっとここにいたんだ。

あの頃は、その先どんな試練が待っているかなんて知らなかった。
ただ、幸せを幸せと知らず、仲良し姉弟3人と両親、楽しく過ごしていた。

そんな幸せ家族に思いがけない不幸が訪れた時、いろんな人の支えで”奇跡的な”復帰を遂げた父に付いて新しい土地に越して行き。
父も母も、そして私たちも、人生に置いて大事な経験をたくさんした。

それなりに安定して、古いビルを改装して父は自分の城を建て、完成まで毎日毎日見に行った。
3人の姉弟は父の道を選んだ。
そして姉がその第1号になったとき。
父は病に倒れた。

忙しさに、そして自分の生活に手一杯で、ろくに家に帰らなかった私と弟。
学生時代もいつも家に帰って父や母と過ごし、そしてその時からは自分の経験より父の手伝いを優先した姉。
…もうちょっと、見習えばよかった。
そんな私や弟のことも、それはそれで嬉しそうに見ていてくれた両親。

結婚。
車いすから何とか離れてくれた父と歩いたバージンロード。
その背中を見守る弟の顔。

父の、死。

ちびちゃんの、誕生。

弟の、結婚。
バージンロードを歩く弟の姿に父を想い、多分同じ気持ちだった姉と賛美歌を歌いながら大泣きした結婚式。
父のいない、披露宴。

ちびちゃん従妹の誕生。

そして、いちばんの孝行娘だった、姉の結婚。

感情を滅多に出さない姉が、泣いていた。
そこに居ないけれど、確かにいる父の魂を感じたはずだ。
でも、居ないんだ。
一番、幸せそうにほほえんでいるはずの父は、居ないんだ。

姉は今、妊娠している。
確かに父の血も受け継いだその命に、姉はやっぱり全てを捧げるのだろう。
今、優しい優しい旦那様にそうしているように。

(そこの辺りから、エラい違いだな、私。
仕事にも全力投球だった姉は実家のこと以外すっぱり辞めて最高の奥さんをしている。
私ってどうしてこうも中途半端なんだろう…。)

そんな、振り返れば長い長い時を。
遠くなっても同じ場所で、檻の中で、じっとじっと生きていたんだね。

今度、母を連れてこようと思った。
そして、一緒に泣こう。

一人こっそり泣いていた私に、気づいたのはちびちゃんでした。

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